母校にてアニマルフローを用いた動作指導を行いました
母校である玉野光南高校サッカー部にて動作指導を行いました。
7月、サッカー部監督の乙倉健二監督から夏休み期間のレベルアップチャレンジとしてご依頼を頂きました。
昨年はトレーナー職についての講演、今年はアニマルフローを用いた動作指導の実施と、毎年お招きいただきありがとうございます。貴重な機会をいただいたことに感謝致します。
たった30分間のトレーニングで可動範囲の広がりを実感
約100名の部員を3グループに分けて、それぞれ約30分間の指導を実施しました。
アニマルフロー特有の両手両足を地面につけておこなう自重トレーニングに最初は慣れない様子でしたが、繰り返し練習するうちに少しずつできる様になっていきました。
中でも、肩甲骨と腕を使ってしっかり地面にパワーを伝え、身体をコントロールすることに苦戦していました。上肢、下肢を自在にコントロールするための土台となる体幹筋力は、まだまだ鍛える余地がある様子でした。
各グループ約30分間のトレーニング後に前屈、後屈、回旋など柔軟性を確認すると、トレーニング前に比べて可動範囲が広がったことに驚く選手もいました。
アニマルフローとは自らの筋力で可動性を高める
先ほどの部員達は、ストレッチをしていないのに、なぜ関節可動域が広がったのでしょうか?
柔軟性(flexibility)と可動性(mobility)の違い
柔軟性とは、他動運動による動きです。他者の力を借りたり、外力を用いたりして筋肉がどの程度伸び縮みするかを意味します。
例えば、パートナーストレッチでハムストリングス(もも裏筋)を伸ばす行為は柔軟性を高めていることになります。
一方、可動性とは、自動運動による動きです。自らの筋肉で関節をどの程度動かせるかを意味します。 アニマルフローは自らの筋力発揮により可動性を高めることを得意とするトレーニングです。
可動性を高める意味
可動性とはスポーツパフォーマンス向上のためのトレーニング理論であるパフォーマンスピラミッドの土台となる部分を占めます。
可動性の土台があるからこそ、筋力を発揮することができ、スキルアップへと積み上げていくことが可能となります。
光南高校サッカー部ではアニマルフローをウォーミングアップに導入しています。
アニマルフローで可動性を高めた後に、サッカー特有の動きとなるブラジル体操へ移行し、そのあとにボールを使った動きへと繋げていきます。
パフォーマンスを司る土台部分を大きくしていくことによってパフォーマンスアップが実現でき、同時に怪我予防を果たしてくれるのです。
ファンクショナルラインに作用するアニマルフロー
「ファンクショナル(機能的)」ラインとは、主に運動やスポーツ活動時に機能する重要な筋膜ラインで、
①身体の前面を走るフロントファンクショナルライン
②後面を走るバックファンクショナルライン
この2つに分かれています。
トップアスリートのファンクショナルライン
①フロントファンクショナルライン
長友佑都選手のキックフォームです。
長友佑都選手のキックフォームの特徴の1つに、フロントファンクショナルライン機能を有効に活かしているという点が挙げられます。
フロントファンクショナルラインとは、腕の付け根(上腕骨上部)から大胸筋→腹斜筋→腹直筋→長内転筋を経由して反対側の股関節、大腿骨へとつながる筋膜ラインです。
長友佑都選手のキック画像では右上腕骨(右腕付け根)から左脚の内転筋へと筋膜ラインを機能させることにより安定した姿勢で鋭いクロスをあげることができます。
アニマルフローではサイドキックスルーなどによって、フロントファンクショナルラインを機能させることができます。
②バックファンクショナルライン
三苫薫選手のドリブル姿勢です。
三苫薫選手のドリブル姿勢の特徴の1つに、バックファンクショナルライン機能が長けているという点が挙げられます。
バックファンクショナルラインは主に、腕の付け根(上腕骨上部)から広背筋→腰仙筋膜→大臀筋→外側広筋を経由して反対側の股関節、大腿骨へとつながる筋膜ラインです。
三苫薫選手のドリブル画像では、右上腕骨(右腕付け根)から左股関節へ筋膜ラインをうまく使うことにより、体幹の安定性と四肢の動きにパワーを生み出すことができます。
そしてアニマルフローにも、バックファンクショナルラインを機能させる動きがたくさん含まれています。
アニマルフローは全身を使って行うトレーニングのため、常に複数の関節を連動して動かします。そのため筋膜ラインを機能させることで、しなやかな可動性を作り出していきます。
理学療法士の見解 ースポーツ障害予防にも繋がる
選手の怪我予防やリハビリに手腕を発揮している猪原圭一トレーナーの見解によると、
「アニマルフローは脊柱を分節的に動かすことを可能にするトレーニングで、体幹のモビリティ(可動性)を引き出すことが可能となる。プランクなどで体幹を固めるのではなく、動きのなかで胸郭、股関節をコントロールできる体幹力を鍛えることができる。選手たちが日頃、意識してトレーニングできないところを無意識で鍛える要素がある」
とのことでした。
猪原トレーナーの意見から推察すると、アニマルフローはパフォーマンスアップのみならず、スポーツ障害予防にも大いに貢献することがわかります。
特に、腰痛、腰椎分離症、グロインペイン症候群(鼠蹊部痛)といった脊柱、骨盤、股関節に起因するスポーツ障害には効果的と考えられます。
あおき整形リハビリクリニック
理学療法士 猪原圭一氏
<保有資格>
・日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー
・F.R.ピラティスインストラクター
・ケガゼロプロジェクトインストラクター
・骨盤底筋エクササイズ「PifilAtes」インストラクター
・国際認定 筋膜マニピュレーション(fascial manipulation level1 終了)
・日本赤十字社救急法救急員
・日本サッカー協会C級コーチライセンス
動作指導から1ヶ月後の部員達の身体変化
アニマルフロー指導から約1ヶ月後に、光南高校サッカー部員へ身体の変化を感じているかどうか、アンケートを実施しました。
7割以上の選手が、アニマルフローによって良い変化を感じるとの結果でした。
身体が柔らかくなった、動きやすくなったといった、柔軟性や可動性に変化を感じているという意見が多数ありました。
今回、30分の指導時間ということで、アニマルフローのほんの一部の紹介になりましたが、真剣に取り組んでくれた選手達に感謝致します。自由自在に身体をコントロールできる能力が備わってくると、パフォーマンスアップ、スポーツ障害予防に効果を発揮してくれます。
今後も機会があれば、身体機能向上の重要性をさまざまな角度から伝えていけるよう、知見を深めておきたいと思います。
そして岡山のスポーツ発展、スポーツ障害予防、また岡山の皆様の健康寿命延伸へと貢献してけるように努力して参ります。